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【厚生年金基金制度】



【厚生年金基金制度の概要】



『厚生年金基金制度とは』

厚生年金基金とは企業が従業員と給付の内容を約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる確定給付型の企業年金制度の一つであり昭和41年10月に厚生年金保険法の改正により施行された。
企業や業界団体等が厚生労働大臣の認可を受けて設立する法人である厚生年金基金が、年金資産を管理・運用して年金給付を行う。
 また、国の年金給付のうち老齢厚生年金の一部を代行するとともに、厚生年金基金独自の上乗せ(プラスアルファ)を行う制度として、一時は企業年金制度の代表的な制度であった。
しかし、バブル崩壊等による金融市場の悪化で運用資産が減少し、代行部分の資産を割り込むなどしたため、平成25年通常国会において「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が成立し、平成26年4月1日に施行され、施行後は、厚生年金基金の新設は認められなくなるとともに法で定める年金積立資産額が一定の水準を満たさない場合は、解散か他の企業年金に移行する され、他の企業年金制度への移行の促進が図られた。
その結果、5年間の時限措置が経過した令和元4年4月現在で存続厚生年金基金は8基金となり、令和4年3月末日現在では5基金となった。
更に、改正法の施行(平成26年4月)後10年以内に厚生年金基金制度の廃止の方向で制度の見直しを行うことになっている。


『厚生年金基金の性格』

基金は、厚生年金保険法により設立を認められた「特別法人」であり、公法上の特別の権限が与えられるとともに国の特別の監督規制を受けるといった性格をもっている。
また、基金は国の行う年金制度のうち、老齢厚生年金の報酬比例部分の年金の一部を代行し、これに加えて企業や業界の実態に応じた独自の上乗せ給付(プラスアルファ)をおこなうとともに、基金独自に設計した加算部分(加算年金又は一時金)を上乗せした年金給付を行う。
なお、代行給付には再評価およびスライド部分は含まれていない。再評価、スライド部分の給付は厚生年金本体から支給される。
平成17年4月以降に設立する厚生年金基金の上乗せ給付(プラスアルファ)は給付現価で代行部分の5割程度まで確保していなければならない。


『厚生年金基金と確定給付企業年金との比較』

厚生年金基金と確定給付企業年金との違いは、厚生年金基金は国(厚生年金保険)の一部を代行して、その代行部分に厚生年金基金独自の年金を上乗せして支給する制度に対し、確定給付企業年金(DB)は国(厚生年金保険)の年金の代行部分はなく、確定給付企業年金(DB)独自の上乗せ年金を支給する制度になっている。

※厚生年金基金と確定給付企業年金との比較の詳細については年金なび「企業年金制度」の「確定給付企業年金」→「制度のしくみ」をご覧ください。


『厚生年金基金の設立形態』

■代行型厚生年金基金と加算型厚生年金基金

厚生年金基金は給付形態により、国の報酬比例部分の代行部分に独自の上乗せ給付(プラスアルファ)だけを支給する代行型厚生年金基金と、報酬比例部分の代行部分に独自の上乗せ給付(プラスアルファ)を支給するとともに、基金独自に設計した加算部分(加算年金又は一時金)を上乗せした年金給付をおこなう加算型厚生年金基金がある。

■厚生年金基金の設立形態


●単独設立:企業が単独で設立する厚生年金基金
●連合設立:主力企業を中心として、2以上の企業で設立する厚生年金基金及び主力企業を除いた関連企業で設立する厚生年金基金並びに特定の企業とその資本系列にある企業グループで設立する厚生年金基金
●総合設立:基金を設立しようとする企業に対し強力な指導統制力を有する組織母体又は当該企業で構成されている健康保険法に基づく健康保険組合があり、それらの運営状況が健全かつ良好であることを条件に設立する厚生年金基金


『厚生年金基金の設立事業所と加入員』

■設立事業所とは

厚生年金保険に加入している会社を適用事業所といい、厚生年金基金に加入する適用事業所を設立事業所という。なお、設立事業所の名称は基金規約の別表に記載することになっている。

■厚生年金基金に事業所が加入するとき

厚生年金適用事業所の事業主が厚生年金基金に加入するときは、その事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の過半数で組織する労働組合があるときは当該労働組合、当該厚生年金保険の被保険者の過半数で組織する労働組合がないときは当該厚生年金保険の被保険者の過半数を代表する者の同意を得て、厚生年金基金に加入の申し出をおこない、厚生労働大臣の加入の認可を受ける。

■厚生年金基金の加入員

厚生年金基金の設立事業所に使用される厚生年金保険の被保険者は全員加入員となる。

■加入員に関する届出事項

国(厚生年金保険)の届出に準じた届出書を厚生年金基金にも提出する。


【厚生年金基金の掛金】



『国の保険料と厚生年金基金掛金との関係』

(出典:企業年金連合会「実務マニュアル」より)



厚生年金基金の掛金

■掛金の種類

●基本標準掛金:国の代行部分(免除保険料)+上乗せ給付の掛金
●加算標準掛金:厚生年金基金独自の加算給付の掛金
●特別掛金:過去勤務債務を償却するための掛金
●特例掛金:次回再計算までに見込まれる不足金を償却するための掛金
●事務費掛金:厚生年金基金の業務を行うための掛金
●福祉施設掛金:福祉施設の運営のための掛金

■掛金の負担

●基本標準掛金のうち代行部分の掛金(免除保険料):
事業主と加入員が折半〜厚生年金保険の保険料の一部代行のための掛金であり、本来の厚生年金保険の保険料の一部を厚生年金基金が代行している保険料

●代行部分以外の掛金:
原則事業主負担〜事業主が従業員のために負担するための掛金。ただし、事業主と従業員の過半数が同意すれば半額を超えない範囲で加入員にも負担させることができる。


【厚生年金基金の給付】


  • 厚生年金基金の給付の仕組
  • 厚生年金基金の給付金に対する税金


  • 『厚生年金基金の給付の仕組』

    ■国と厚生年金基金の給付の関係


    ※1:老齢基礎年金は国民年金から、報酬比例 再評価分とスライド分については厚生年金(いづれも国から支給される。
    ※2:加算部分の給付は、基金本来の目的である基金独自の上乗せをおこなって年金給付をおこなう制度であり、各基金によって相違があるが、原則として加入期間が2年以上あれば給付される。但し、加入期間によって給付の種類が相違する。
    ※3:基本部分の給付は、加入期間が1ヶ月以上あれば年金として給付される。但し、給与と加入期間に基づいて年金額は決定される。
    ※4:加給年金、障害基礎年金、障害厚生年金、遺族基礎年金、遺族厚生年金は、基金に加入しない方と同じように従来どおり国から支給される。

    ●老齢給付
    @代行型厚生年金基金
    ・第2種退職年金=基本年金(代行部分+プラスアルファ)
    厚生年金保険の一部を代行するとともに基金独自の上乗せをおこなって年金給付をおこなう制度であり、支給される年金給付は第2種退職年金と呼ばれる。
    年金の計算は基金に加入期間中の平均標準給与額に基金で定めた給付率と加入期間を乗じて求める。
    第2種退職年金は厚生年金基金に1ヶ月でも加入すれば年金として支給されるので、一時金の支給はない。

    A加算型厚生年金基金
    ・第1種退職年金= 基本年金+加算年金
     第2種退職年金(基本年金)に退職金等を基金独自の加算部分として上乗せして支給される年金給付であり、第1種退職年金と呼ばれる。
     年金の計算は基金に加入期間中の平均標準給与額に基本部分と加算部分のそれぞれに基金で定めた給付率と加入期間を乗じて求める。
     また、各厚生年金基金の規約の定めにより、加算部分の年金を次の一時金給付を行うことができる。

    ●一時金給付等
    ・退職一時金:加算年金の受給期間を満たすことができなかった加入員に対して支給。
    ・選択一時金:加算年金を年金での支給ではなく、希望すれば一時金として支給。
    ・遺族一時金:加入員が加算年金を受給する前に死亡した場合や、年金受給者が加算年金を受けることができる期間前に死亡した場合に、残り 期間を一時金として支給。
    ・その他の給付金:その他、各厚生年金基金の規約の定めにより、加算部分を障害給付金や遺族年金として支給することができる。

    ※厚生年金基金から支給する年金や一時金の支給要件や金額は、各厚生年金基金の規約で定められている。


    『厚生年金基金の給付金に対する税金』

    ■老齢年金

    退職に伴って退職年金として給付されたものは公的年金等に該当し、雑所得として課税され、雑所得の公的年金等として課税されて源泉徴収を行う。
    なお、確定給付企業年金と違い、扶養親族等申告書を提出して扶養控除を上けることができる。

    ■一時金

    退職に伴って退職一時金として給付されたものは、みなし退職手当等に該当し、確定給付企業年金と同じように退職所得として課税される。また、退職所得は所得税の源泉徴収に併せて住民税も特別徴収される。

    ■その他の給付金

    ●障害給付金
    非課税

    ●遺族給付金
    遺族給付金(年金・一時金)には、みなし相続財産として『500万円×法定相続人数』超分に相続税が課税される。