■日本の年金制度
高齢化社会を迎え、年金は高齢化社会の生活設計の基礎として、かかせない制度となっています。
生活設計の一助である現在の年金制度は、昭和61年4月1日に全国民共通の基礎年金制度が導入され、現在の公的年金制度が施行されました。
昭和41年10月1日には国の年金を補完する制度として、企業年金の一つである厚生年金基金制度が施行され、老齢厚生年金の報酬比例部分の一部を代行するとともに、基金独自の年金を上乗せした給付が行われるようになりました。
その後、厳しい経済環境のなかで、企業年金の財政も悪化して企業本体の経営に負担がかかるようになってきたため、受給権の保護のための措置のため、新しい企業年金制度として平成13年10月には確定拠出年金制度が施行され、平成14年4月には確定給付企業年金制度が施行されました。
また、資産の運用環境の悪化に伴う厚生年金基金の積立資産の減少を受け、平成25年6月19日には厚生年金基金制度の廃止に関する「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が成立し、平成26年4月1日から法律が施行されました。
その結果、厚生年金基金の積立資産が、国の代行部分は上回っているが上乗せ部分は積立不足である厚生年金基金については、法施行から5年以内に国の代行部分を返上して確定給付企業年金等に移行するか、解散のいずれかを選択することとし、法施行から10年経過後は、国の代行部分を厚生年金本体へ移行させることとなりました。
平成27年10月1日には「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(平成24年法律第63号)が施行され、これにより、会社員・公務員の区別なく、同額の報酬であれば同額の保険料を負担し、同額の公的年金給付を受け取るという公平性を確保することで、公的年金全体に対する国民の信頼を高めるため、厚生年金保険制度に公務員および私立学校の教職員も加入することとなりました。
平成29年1月1日には「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第66号)が施行され、これまでは個人型確定拠出年金に加入できる方は自営業や厚生年金保険の被保険者で企業が行っている企業年金等に加入されていない方等に限られていましたが、より豊かな老後生活に備えることを目的として、公的年金や企業年金の補完のために平成29年1月1日からは加入条件が緩和されて企業が行っている企業年金等に加入されている方や公務員等及び第2号被保険者である専業主婦についても個人型確定拠出年金に加入できるようになりました。
※1 | 第2号被保険者等とは、被用者年金被保険者のことをいう(第2号被保険者のほか、65歳以上で老齢、または、退職を支給事由とする年金給付の受給権を有する者を含む)。 |
※2 | 被用者年金制度の一元化に伴い、平成27年10月1日から公務員および私学校職員も厚生年金に加入することになりました。また、共済年金の職域加算部分は廃止され、新たに年金払い退職給付が創設されました。 ただし、平成29年9月30日までの共済年金に加入していた期間については、平成27年10月以降においても、加入機関に応じた職域加算部分が支給されます。 |
年金制度は、公的年金制度と企業年金制度に大別され、公的年金制度には国民年金(基礎年金)、厚生年金保険、共済年金制度があります。また、企業年金制度等には確定給付企業年金(基金型・規約型)、確定拠出年金(企業型・個人型)、厚生年金基金、適格退職年金(平成24年3月末で廃止)、国民年金基金等があります。
1.国民年金(基礎年金)〜 1階建部分
・ | 被保険者:
日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者全員が加入。被保険者の種類によって第1号被保険者(自営業者等)、第2号被保険者(会社員や公務員等)、第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)の3種類に区別される。 |
・ | 保険者:日本年金機構
加入等の適用事務、保険料関係業務、保険給付等の現業事務は年金事務所(旧社会保険事務所)やお住まいの市区町村役所が窓口。 |
・ | 保険料負担:
1か月当りの国民年金の保険料は次に掲げる保険料を被保険者が負担。
※ | 国の国民年金保険料は、毎年4月に280円ずつ引上げられて平成29年9月以降は16,900円(平成16年度の法改正で決められた保険料額)で固定されましたが、名目賃料変動率による保険料改定率を平成16年度の法改正で決められた保険料額に乗じて決めることになっています。
また、保険料を納めることが、経済的に難しいときは国民年金保険料免除・納付猶予制度がありますし、学生の方は「学生納付特例制度」があります。
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・ | 保険給付:
老齢、障害、死亡等に対して全国民共通の基礎年金が支給される。 |
2.厚生年金保険〜 2階建部分
民間企業で働く70歳未満の従業員や公務員等が加入。基礎年金の上乗せとして報酬比例年金を支給する。
・ | 保険者:日本年金機構
加入等の適用事務、保険料関係業務、保険給付等の現業事務は年金事務所(旧社会保険事務所)が窓口。 また、公務員等の場合は、加入している各共済組合の窓口でも取扱い。 |
・ | 被保険者:
公務員及び私学共済加入者や民間のすべての法人事業所および一部の業種を除く5人以上の個人事業所で働く従業員(強制加入)が被保険者となる。但し、70歳以上は被保険者とならない。 |
・ | 保険料負担:
被保険者は次に掲げる保険料を事業主と被保険者が折半で負担。
厚生年金基金の加入者については、一般の被保険者の厚生年金保険料から厚生年金基金の代行部分の免除保険料を除いた残りの保険料率を事業主と被保険者が折半で負担。
※ | 国の厚生年金保険料は、平成16年10月より、毎年一般の被保険者は0.354%ずつ、船員・坑内員の被保険者は0.248%ずつ引上げられて平成29年9月以降は18.3%で固定されました。 |
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・ | 保険給付:
老齢、障害、遺族に対する給付 |
3.共済年金〜3階建部分
公務員および私立学校の教職員等が加入。企業年金と同様に、老齢基礎年金及び老齢厚生年金の上乗せとして年金払い退職給付が支給される。
※ | 平成27年10月より、被用者年金一元化法に基づき国家公務員及び地方公務員並びに私立学校教職員についても厚生年金保険に加入し、2階部分の年金は厚生年金に統一されました。
なお、2階部分の保険料については、国の厚生年金保険料率に統一されるとともに、制度間で差異がある給付等についても、一部の経過措置を除き厚生年金に揃えることになりました。
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企業から受ける退職給付は、大きく「企業年金」と「退職一時金」があります。
そのうち、退職一時金は@社内で財務諸表に債務として計上する方法(退職給付債務)、A外部で資金を積み立てる方法(一時金=中小企業退職金共済等)、B退職一時金に要する費用を、給与や賞与に上乗せする形で支払う方法(前払い退職金)があります、
また、企業年金制度や自営業者を対象とする国民年金基金制度は、公的年金を補完し、より豊かな老後生活に備えることを目的とするものです。
我が国の企業年金制度には、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度、厚生年金基金制度等があります。
このほか、自営業者や農業者には、基礎年金を補完し上乗せ給付を行う制度として、付加年金や国民年金基金、農業者年金等があります。
※ | 厚生年金基金制度については、平成26年4月1日に成立した「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成25年法律第63号)」が施行されたことにより、以下の措置が講じられています。
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○ |
施行日以降、厚生年金基金の新規設立は認めない |
○ |
施行日から5年間の時限措置として特例解散制度を見直し、基金の解散時に国に納付する最低責任準備金の納付期限・納付方法の特例を設ける。 |
○ |
上乗せ給付の受給権保全を支援するため、厚生年金基金から他の企業年金などへの積立金の移行について特例を設ける。 |
○ |
法で定める年金積立資産額が一定の水準を満たさない場合は、解散か他の企業年金に移行することを義務付ける。 |
○ |
改正法の施行後10年以内に厚生年金基金制度の廃止の方向で制度の見直しを行う。 |
■退職給付制度の体系
■企業年金の変遷
※ |
企業年金の最近の現況につきましては、「年金なび」の「最新の年金情報」に記載されております「企業年金連合会より平成○○年○○月○○日現在の企業年金の現況が発表されました」をご覧ください。 |
1.確定給付企業年金〜3階建部分
確定給付企業年金制度は、厚生年金基金と異なり、国の厚生年金の代行を行わず、上乗せの年金給付のみを行う仕組みです。
厚生年金基金制度は、代行給付があるために終身年金を原則とする等の制約があり、また、近年の資産運用環境の悪化等により財政状況が大変厳しいものとなったことから、国の代行を行わず、労使の合意で柔軟な設計を行うことができる企業年金制度の創設の要望が寄せられていました。
そこで、労使の自主性を尊重しつつ、受給権の保護等を確保した企業年金制度として、平成14年4月に本制度が新たに導入されました。
・ | 加入時に将来受給できる年金給付額が確定している制度 |
運営形態により、厚生労働大臣の認可を受けて企業が法人格のある企業年金基金を設立する「基金型」と、労使合意の年金規約を制定し、厚生労働大臣の承認を受ける「規約型」の2つに大別され、年金資産を管理・運用して年金給付を行う。
2.確定拠出年金〜3階建部分
確定拠出年金は、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用益との合計額をもとに給付額が決定される仕組みです。
これまでの確定給付型の企業年金は、中小零細企業や自営業者に十分に普及していないことや、転職時の年金資産の移換が不十分であること等の問題が指摘されていました。これらの問題に対処するため、平成13年10月に本制度が新たに導入されました。
・ | 加入者個人が運用の指図をおこない、運用により生じた運用収益により、受給できる年金給付額が確定する制度 |
運営形態により、企業が実施する「企業型」と、国民年金基金連合会が窓口となり、確定給付型企業年金のない従業員や自営業者等のほか、企業年金等に加入されている方や公務員等及び第2号被保険者である専業主婦が加入できる「個人型」の2つに大別され、いずれも規約を作成し厚生労働大臣の承認を受ける。拠出された掛金は個人ごとに明確に区分され、掛金と個人の運用指図による運用収益との合計額をもとに給付額が決定される。
なお、国では個人型の確定拠出年金をイデコ(iDeCo)の愛称で、現在、普及推進に力を入れています。
3.厚生年金基金〜3階建部分
厚生年金基金制度は、我が国の企業年金の中核をなす制度として、企業や業界団体等が厚生労働大臣の認可を受けて設立する法人が、国の年金給付のうち老齢厚生年金の一部を代行するとともに、厚生年金基金独自の上乗せ(プラスアルファ)や、厚生年金基金によっては基金独自に設計した加算部分(加算年金又は一時金)を上乗せした年金給付を行うことにより、従業員により手厚い老後保障を行うことを目的として、昭和41年に発足しました。
そのための、年金資産の管理・運用についても厚生年金基金が直接行うことになっています。
厚生年金基金制度はその後、生活水準の向上や経済・投資環境の変化などを踏まえ、制度の充実・改善が図られてきましたが、平成15年9月からは、確定給付企業年金法の制定により、代行部分を国に返し(代行返上)、確定給付企業年金へ移行することも認められるようになっています。
また、平成25年6月19日に成立した厚生年金保険法改正により、厚生年金基金は平成26年4月より新規の設立ができなくなるとともに、法で定める年金積立資産額が一定の水準を満たさない場合は、解散か他の企業年金に移行することが義務付けられました。
更に、改正法の施行後10年以内に厚生年金基金制度の廃止の方向で制度の見直しを行うことになっています。
・ | 保険者:
厚生年金の基金代行部分については厚生年金基金 |
・ | 被保険者:
厚生年金基金の加入事業所に働く従業員(強制加入)。但し、年齢は70歳未満。 |
・ | 保険料負担:
代行部分の免除保険料24/1000〜50/1000を事業主と被保険者が折半で負担。また、プラスアルファや加算部分に係る掛金は各基金で決定するが、原則事業主負担。 |
・ | 保険給付:
老齢給付のうち報酬比例部分を給付 |
4.適格退職年金 〜 3階建部分(平成24年3月末に廃止)
退職金積立てを年金化して支給する制度。
企業と信託会社、生命保険会社等との間で締結される退職年金に関する信託契約または生命保険契約等のうち、その契約内容が法人税法施行令の定める一定の要件を満たしていると国税庁長官が承認したもの。
なお、適格退職年金は成24年3月末で廃止となりました。
5.国民年金基金〜 3階建部分
国民年金基金制度は、自営業者等の国民年金第1号被保険者が、基礎年金に加え、所得等に応じて加入口数や給付の型を自らが選択することにより、老後の所得保障の充実を図ることを目的とした制度です。
サラリーマンには、厚生年金保険、厚生年金基金等の基礎年金の上乗せの制度があるのに対し、自営業者等の国民年金第1号被保険者については、基礎年金のみであったことから、基礎年金の上乗せの年金制度として、平成3年に導入されました。
・ | 国民年金の給付を補完するため、付加年金や個人が確定拠出年金として加入できる制度。 |
国民年金の第1号被保険者だけが任意で入れる年金制度のこと。数ある年金のしくみの中でもこの付加年金はおトク感のある年金といわれています。
※(参考)
■年金制度以外の社会保険制度
年金制度以外の日本の社会保険制度には次のような制度があります。各制度の詳細については、年金なびのリンク集でご確認ください。
1 協会けんぽ
・ | 窓口:
加入等の適用事務と保険料関係業務は年金事務所が窓口。保険給付の手続きは全国健康保険協会の各都道府県協会支部。 |
・ | 保険者:
全国健康保険協会 |
・ | 被保険者:
すべての適用法人事業所および一部の業種を除く5人以上の個人事業所で働く従業員(強制加入) |
・ | 保険料負担:
標準報酬月額及び標準賞与額の3%〜12%を限度とする範囲内で各都道府県ごとに決定される一般保険料と、40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)は、これに全国一律の介護保険料率を事業主と被保険者が折半で負担。
※ | 協会けんぽの保険料率は都道府県ごとの加入者の方々の医療費に基づいて算出されています。疾病の予防などにより加入者の方々の医療費が下がれば、その都道府県の保険料率を下げることが可能な仕組みになっています。逆に、加入者の方々の医療費が上がれば、その都道府県の保険料率は上がります。
なお、都道府県間の年齢構成や所得水準の差異が保険料率に影響することがないよう調整しています。 |
※ | 介護保険の保険料率については、毎年、各年度で収支が均衡するよう、介護納付金の額を総報酬額で除したものを基準として保険者が定めると健康保険法で定められています。 |
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・ | 保険給付:
業務や通勤外での病気・けが・出産・死亡などに対する給付 |
2 組合管掌
・ | 保険者:
健康保険組合 |
・ | 被保険者:
健康保険組合の加入事業所に働く従業員(強制加入) |
・ | 保険料負担:
標準報酬月額及び標準賞与額の3%〜12%の範囲で、毎年、健康保険組合毎に収支が均衡するよう保険料を決定。負担割合は事業主と被保険者が原則折半だが、事業主が半分以上の負担も可。
介護保険料(40歳以上64歳未満の介護保険第2号被保険者)は、毎年、国より通知される介護給付費納付金を賄えるように健康保険組合毎に保険料率を設定。
事業主と被保険者が折半で負担。
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・ | 保険給付:
業務や通勤外での病気・けが・出産・死亡などに対する給付 |
1 労災保険・雇用保険
・ | 保険者: 労働厚生省(国)
加入等の適用事務、保険料関係業務の現業事務は原則として都道府県労働局、労働基準監督署が窓口。
保険給付については、労災保険は労働基準監督署、失業給付等は公共職業安定所(ハローワーク)が窓口。 |
・ | 被保険者:
雇用保険では労働者を一人でも雇っていれば、業種や事業所規模に関係なく労働者を雇用する事業所に働くすべての労働者が雇用保険の被保険者となります。
但し、次に該当する方は雇用保険への加入の必要はありません。
@ | 1週間の所定労働時間が20時間未満であること。 |
A | 雇用期間が31日以上継続しないことが明確である場合。 |
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注1 | 雇用契約期間が31日未満であっても、雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合や雇用契約に更新規定がないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合は、雇用保険の被保険者となります。 |
注2 | 平成28年3月29日に成立した雇用保険法等の改正で、平成29年1月以降は65歳に達した日以後に新たに雇用される者についても雇用保険の被保険者となります。但し、雇用保険料の納付は平成31年度分までは免除になります。 |
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・ | 保険料負担:
年間の賃金総額に労災保険料率(事業の種類によって相違)と雇用保険料率をかけて得た額を納付。なお、労災保険料は全額事業主負担。※1
雇用保険料には労使が折半で負担する失業等給付の料率と事業主が全額負担する※2雇用保険二事業の料率がある。
※1 | 労災保険料率はそれぞれの業種毎に過去3年間の災害発生状況などを考慮し、原則3年ごとに改定されます。 |
※2 | 雇用保険制度では、労働者に対する求職者給付等の制度と、事業主に対する援助制度等があります。この内、事業主に対する援助制度等の制度を「雇用保険二事業」と呼びます。 |
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・ | 保険給付:
労災保険は業務上や通勤途上の災害による病気・けが・障害・死亡などに対する給付。
雇用保険は失業給付として求職者給付や就職促進給付に対する給付がある。また、雇用継続給付として高齢者雇用給付、育児休業給付、介護休業給付等がある。 |