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制度のしくみ


厚生年金保険制度の沿革


労働者年金保険法の制定(厚生年金保険法の前身)

●昭和16年厚生年金保険法の前身となる労働者年金保険法を制定(昭和17年4月1日施行)
・男子工場労働者が加入
・財政方式は完全積立方式※

 ※完全積立方式とは民間保険と同じように、将来受け取る予定の年金を現役の時に積み立てた積立金と運用収入を活用して年金を受け取る方式であるが、インフレ等で積み立てた年金の価格が目減りをして年金が減少するデメリットがある。(厚生労働省HPより)

●昭和19年改正(昭和19年10月施行)
・名称を厚生年金保険法に改称
・加入者を男子の事務員や女子にも拡大
・老齢年金の支給開始年齢を男子55歳、女子50歳に制定

旧厚生年金保険法(旧法)

●昭和29年厚生年金保険法の全面改正(昭和29年5月施行)
・現在の厚生年金保険法の骨格となる制度に改正
・給付形態を定額部分+報酬比例部分とする
・老齢年金の支給開始年齢を男子60歳、女子55歳に引き上げ
・財政方式を修正積立方式※に変更

 ※修正積立方式とは積立方式を踏襲しつつ、賦課方式(その時の現役世代の保険料を原資として年金を支給)の法式を取り入れた方式である。
現在は賦課方式を中心としているが、基礎年金の2分の1を国庫負担とするとともに、年金給付額の不足分は今まで積み立てられている年金資産の取り崩しを行うなど賦課方式に一部積立方式も取り入れられている。
  (厚生労働省HPより)

●昭和36年改正(昭和36年4月施行)
・国民年金法の施行に伴い各年金制度間の通算老齢年金制度を導入

●昭和40年改正(昭和41年10月1日施行)
・厚生年金基金制度の創設

●昭和48年改正(昭和48年11月施行)
・年金額の改定に物価スライド制※を導入

 ※物価スライドとは年金額の実質価値を維持するため、物価の変動に応じて年金額を改定する制度。なお、物価が5%以下の場合は物価スライドをおこなわない。
  (厚生労働省HPより)

新厚生年金保険法(新法)

●昭和61年改正(昭和61年4月施行)
・20歳以上の全国民に年金の加入(学生は任意加入)を義務付ける基礎年金制度を導入
・厚生年金保険の給付乗率を生年月日に応じて10/1000から7.5/1000まで段階的に引き下げ
・女子の支給開始年齢を60歳に引き上げ
・厚生年金保険の適用を5人未満の法人にも拡大
・基礎年金の導入に伴い通算年金制度は廃止
・船員保険※の職務外の年金部門を厚生年金保険制度に統合

 ※船員保険制度とは船員又はその被扶養者の年金、医療、労災、失業等の総合社会保険制度として、昭和14年船員保険法(昭和15年6月施行)が制定された制度。

●平成元年改正
・完全自動物価スライド※制の導入(平成2年4月施行)
・20歳以上の学生は国民年金への強制加入(平成3年4月施行)
・自営業等を対象として上乗せ年金の支給制度実施のため任意加入の国民年金基金制度の創設(平成3年4月施行)

 ※完全物価スライドとは年金額の実質価値を維持するため、前年(1月から12月まで)の消費者物価指が5%以下の場合でも変動に応じ物価スライドをおこない。翌年4月から自動的に年金額が改定される。

●平成6年改正
・厚生年金保険の定額部分の支給開始年齢を生年月日に応じて65歳まで段階的に引き上げ(平成13年4月施行)
・在職老齢年金を賃金と年金額の合計が賃金の増加に応じて増加する仕組みに改善(平成7年4月施行)
・育児休業中の厚生年金保険料の本人負担分を免除
・厚生年金保険の報酬比例部分の年金額を現役世代の手取り賃金の変動率で改定する可処分所得スライド制度の導入※(平成6年10月施行)
・厚生年金加入者の賞与等から特別保険料(1%)を徴収(年金額の計算には反映せず)(平成7年4月施行)

 ※可処分所得スライドとは厚生年金の報酬比例部分を、現役世代の手取り賃金の上昇に応じて年金額を改定する方式。

●平成9年改正
・全ての公的年金制度共通の基礎年金番号の導入(平成9年1月施行)
・旧三共済(JT、JR、NTT)制度を厚生年金保険に統合(平成9年4月施行)

●平成12年改正
・厚生年金保険の保険料を賃金と賞与から徴収する総報酬制を導入(平成15年4月施行)
・育児休業中の厚生年金保険料の本人負担分と事業主負担分の両方を免除(平成12年4月施行)
・20歳以上の学生の国民年金保険料を本人の所得が一定以下の場合は免除(平成12年4月施行)
・65歳以上の年金額は物価スライドだけで改定(平成12年4月施行)
・厚生年金保険の適用年齢を65歳から70歳までに引き上げ(平成14年4月施行)
・厚生年金保険の報酬比例部分の支給開始年齢を生年月日に応じて65歳まで段階的に引き上げ(平成25年4月施行)
・60歳台後半の在職老齢年金の支給停止を69歳まで引き上げる在職老齢年金制度を導入(平成14年4月施行)

●平成13年改正
・農林漁業団体職員共済組合制度を厚生年金保険に統合(平成14年4月1日施行)

●平成16年改正
・厚生年金保険料率を毎年引き上げ、平成29年9月より18.300%で固定(平成16年10月施行)
・基礎年金の国庫負担を3分の1から平成21年度までに2分の1に引き上げ(平成16年10月施行)
・年金額の改定を可処分所得スライドからマクロ経済スライドに変更(平成16年10月施行)
・60歳台前半の在職老齢年金の一律2割カットを廃止(平成17年4月施行)
・70歳以上の在職老齢年金を65歳以上と同様の年金カットを実施。ただし、保険料の徴収なし(平成19年4月施行)
・離婚時の報酬比例部分の年金分割制度の創設(平成19年4月施行)
・65歳以降の老齢厚生年金の繰下げ制度の創設(平成19年4月施行)
・65歳以降の遺族厚生年金と本人の老齢厚生年金の併給の仕組みに改正(平成19年4月施行)
・第3号被保険者の報酬比例部分の年金分割制度の創設(平成20年4月施行)

●平成24年改正
・国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私学学校教職員共済組合の2階部分を厚生年金保険に統合し、被用者年金の一元化を図る(平成27年10月1日施行)
・産前産後休業期間中の保険料免除の創設と産前産後休業終了時の標準報酬月額の改定を創設
 (平成26年4月1日施行)
・パート等短期間労働者に対する適用拡大(平成28年10月1日施行)
・老齢厚生年金等の受給資格期間が40年加入(又は25年)から10年以上加入に短縮(平成29年8月1日施行)

●平成26年4月改正
・新規厚生年金基金の設立認可を中止
・厚生年金基金の特例解散制度の創設に伴い解散や代行返上の促進や他の企業年金制度への移行を支援(平成26年4月1日施行)

●平成28年改正
・パート等短期間労働者に対し、500人以下の企業も労使の合意に基づき、企業単位で短期間労働者への適用拡大を可能とする(平成29年4月1日施行)

●令和2年6月改正
・65歳未満の在職年金の支給停止方法を65歳以上の在職年金の支給停止方法と同じにする。(令和4年4月1日施行)
・65歳以上の在職中の年金改定を毎年おこなう。(令和2年4月1日施行)
・年金の受給開始時期の繰り下げを選択できる年齢を75歳まで引き下げる。また減額率や増額率も変える。(令和4年4月1日施行)
・障害年金の「目の障害」の認定基準が「両眼の視力の和」から「良いほうの目の視力」に改正。(令和4年4月1日施行)
・加入時に発行される国民年金手帳を廃止し、基礎年金番号通知書を公布する。(令和4年4月1日施行)
・短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(令和3年4月1日施行)
・パート等短時間労働者で被用者年金に加入する事業所の規模を501人以上からを101人以上に引き下げ。(令和4年10月1日施行)
・被用者年金に加入しなければならない5人以上使用する個人事業主の業種に弁護士、税理士事務所等を追加。また、国・自治体等で勤務する短時間労働者についても被用者保険の適用対象とする。
 (令和4年10月1日施行)
・年金の適用対象となる短時間労働者の勤務期間要件1年以上の適用判定基準を2か月超とする。(令和4年10月1日施行)

厚生年金保険制度の適用事業所及び加入者


適用事業所

●適用事業所

 厚生年金保険は、事業所単位で適用

 (1)強制適用事業所

  厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)である。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となる。
被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければならない。

  令和4年10月から【法律・会計にかかる業務を行う士業】に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は、強制適用事業所となった。


 詳しくは以下のページでご覧ください。
   健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加

 (2)任意適用事業所

  上記(1)の適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となるができる。

加入対象者(被保険者)

 (1)被保険者

  厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常用的に使用される(※)70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、必ず厚生金保険の被保険者とならなければならない。
(※)雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受けるという使用関係をいう。試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められることとなる。

 (2)パートタイマー・アルバイト等

  パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となる。
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である場合は被保険者となる。

  「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務する、通常の労働者の1週間の所定労働時間または、1月の所定労働日数が4分の3未満である方で、以下の1.から3.のすべてに該当する方が対象となる。

  1.週の所定労働時間が20時間以上あること
  2.賃金の月額が8.8万円以上であること
  3.学生でないこと

   ※「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」の詳細についてはこちらでご覧ください。

    短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

 被保険者資格取得基準(4分の3基準)の明確化
 平成28年10月1日から、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準が以下のとおり明確になりました。


 保険者資格取得の経過措置
 施行日(平成28年10月1日)において、新たな4分の3基準を満たしていない場合であっても、施行日前から被保険者である方は、施行日以降も引き続き同じ事業所に雇用されている間は被保険者となりますので、「資格喪失届」の提出は必要ない。

●被保険者とされない人
 厚生年金保険の被保険者とされない人は、次表のとおりであるが、一定期間を超え雇用される場合は、「常用的にi使用される」ものとみなされ、被保険者となる。

  
(※)法律改正にともない、令和4年10月から被保険者資格の勤務期間要件(2月要件)が見直された。

●厚生年金保険の被保険者の区分
 国民年金に加入している人は「第1号被保険者」、「第2号被保険者」、「第3号被保険者」と区分されているが、各種共済年金が厚生年金に統合されたことに伴い、平成27年10月1日以降は厚生年金保険の被保険者(「第2号被保険者」)についても次のように区分されるようになった。