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【事業主がおこなう手続き】


≪確定給付企業年金制度と事業主の関係≫
(※出典:厚労働省「確定給付企業年金の概要」より)


『基金型確定給付企業年金や規約型確定給付企業年金との関係』

■基金型確定給付企業年金

基金型とは母体企業とは別の法人格を持った企業年金基金を設立した上で、基金において年金資産を管理・運用し、年金給付を行う。

■規約型確定給付企業年金

規約型とは労使が合意した年金規約に基づき、企業と信託会社・生命保険会社等が契約を結び、母体企業の外で年金資産を管理・運用し、年金給付を行う。

※注:基金型確定給付企業年金と規約型確定給付企業年金制度の仕組みや組織については、「確定給付企業年金」の「制度の仕組みを」をご覧ください。

≪事業主に関する手続き≫
(※出典:日本年金機構「事業主の方)」より)

企業年金に加入している事業主は企業年金に対して次のような届出をおこなう必要がある。


『企業年金に加入するとき』

■事業所が企業年金に加入するとき

 厚生年金適用事業所の事業主が確定給付企業年金に加入するときは、厚生年金適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の過半数で組織する労働組合があるときは当該労働組合、当該厚生年金保険の被保険者の過半数で組織する労働組合がないときは当該厚生年金保険の被保険者の過半数を代表する者の同意を得て、確定給付企業年金に申し出で、次の各号のいずれかに掲げる手続を執らなければならない。
1.厚生労働大臣より労使合意による規約型の規約の承認を受けた事業主。
2.企業年金基金の加入について厚生労働大臣の認可を受けた事業 。

■基金型企業年金に加入する場合の申し出用紙

 企業年金に加入する場合の申し出用紙は加入希望の企業年金基金で定めた用紙で加入の申出をおこなう。

『事業主に関する届け出』
■事業所の名称・所在地を変更するとき

 事業所の所在地や名称を変更する場合若しくは双方を同時に変更する場合、事業主は、その旨を国(日本年金機構)と加入している企業年金へ届出する必要がある。
 届出用紙は加入している企業年金や日本年金機構で定めた様式になるので各加入機関に申出して提出する。
 なお、日本年金機構においては、同一年金事務所管内で事業所の所在地を変更する場合と管外へ事業所の所在地を変更する場合とで提出する届書が異なる。

■事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったとき

 次に該当した場合、事業主が「事業所関係変更(訂正)届」を提出しなければならない。

●国(日本年金機構)と加入している企業年金共通の届出書
(1)事業所の連絡先電話番号の変更
(2)事業主の変更
(3)事業主の氏名の変更
(4)事業主代理人を選任(変更)したとき又は解任したとき
(5)会社法人等番号に変更(訂正)があったとき
(6)法人番号に変更(訂正)があったとき
(7)事業所の「法人」「個人」「国・地方公共団体」の区分に変更(訂正)があったとき
(8)本店、支店の区分に変更(訂正)があったとき
(9)その他、企業年金より徴求された事項
※企業年金によっては企業年金で定めた上記の「事業所関係変更(訂正)届」事項が異なる場合があります。

●国(日本年金機構)のみに届出
(1)「昇給月」、「賞与支払予定月」又は「現物給与の種類」の変更
(2)「算定基礎届」又は「賞与支払届」に被保険者氏名等を印字したものの送付を希望するとき又は不要となったとき
(3)社会保険労務士に業務を委託したとき又は委託を解除したとき
(4)年金委員を委嘱したとき又は解任したとき
(5)健康保険組合の名称に変更(訂正)があったとき
(6)内国法人、外国法人の区分に変更(訂正)があったとき

■適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き

 次に該当した場合、事業主が「適用事業所全喪届」又は「適用事業所廃止届」を提出する。
(1)事業を廃止(解散)する場合
(2)事業を休止(休業)した場合
(3)他の事業所との合併により事業所が存続しなくなる場合
(4)一括適用により単独の適用事業所でなくなった場合


≪加入者に関する手続き≫
(出典:企業年金連合会「実務マニュアル」より)


『加入者の概要』

■加入者

 実施事業所に使用される厚生年金保険の被保険者は、企業年金の加入者とする。
 なお、 規約※1で一定の資格を定めたとき(例えば、営業職の人だけに適用するなどの場合)は、資格を有しない者は、加入者としない。ただし、この場合、実施事業所において実施されている企業年金制度等が適用される人の範囲に照らして、特定の人について不当に差別的であってはならないことになっている。
 ※1:就業規則等で定めた資格等


『加入者の資格取得』

■資格取得の時期

次のいずれかに該するに至ったときに、企業年金の加入者の資格を取得する。

@ 実施事業所に使用されるに至ったとき(例えば、入社したとき)
A 使用される事業所又は船舶が、実施事業所となったとき(例えば、事業所が制度に加入したとき)
B 実施事業所に使用される人が厚生年金保険の被保険者となったとき
C 実施事業所に使用 れる人が、※2規約に定められている資格を取得したとき
 ※2(具体例):
  ・例えば、25歳に達した日(25歳を超えて社員となった者は、社員となった日)以後最初に到来する4月1日等
  ・休職が終了した日の翌日等

■資格取得時の事務処理

●加入者の資格取得の届出
 基金型の事業主は、従業員が加入者の資格を取得したときは、30日以内に次に掲げる事項を基金に「加入資格得届」を届出※する。

 @ 加入者の氏名、性別、生年月日及び基礎年金番号
 A 加入者の資格を取得した年月日
 B その他必要な事項(※基準給与の届出等)


『加入者の資格喪失』

■加入者の資格喪失の時期

 加入者は、次のいずれかに該当するに至ったときに、企業年金の加入者の資格を喪失する。

@  死亡したとき
A 実施事業所に使用されなくなったとき(退職、解雇など)
B 使用される事業所又は船舶が、実施事業所でなくなったとき(例えば、事業所が制度を脱退したとき)
C 厚生年金保険の被保険者でなくなったとき(例えば、パートタイマーになったとき)
 ※3:規約に定められている資格を喪失したとき(具体例):
  ・休職したとき
  ・加入者 55歳(60歳)に達した日の翌日(月末)等

■資格喪失時の事務処理

●加入者の資格喪失の届出
 基金型の事業主は、従業員が加入者の資格を喪失したときは、30日以内に次に掲げる事項を基金に「加入者脱退届兼資格喪失届」を届出※する。
 @ 加入者の氏名、性別、生年月日及び住所
 A 加入者の資格 喪失した年月日
 B その他必要な事項


『加入者の異動』

■加入者手続きの時期

事業主は、加入者の異動が発生した都度すみやかに所定の届出をする

■加入者の異動時の事務処理

●加入者に関する事項の変更
基金型の事業主は、加入者に関する事項の変更が発生したときは、 速やかに次に掲げる事項を「加入者関係諸変更届」にて基金に届出※する。
 @ 氏名、性別及び生年月日
 A 氏名の変更年月日

※法定様式でないため、基金・実施事業主によって対応が異なる。

加入者の基準給与の改定

■加入者の基準給与の改定

事業主は、年金額や掛金を給与(基準給与)等に応じて決定する制度(給与比例方式・ポイント制等)の場合は、年金規約に定める毎年の基準給与改定時期に「基準給与届」にて改定後の基準給与を届出する。

加入者の届出用紙

企業年金における加入者に関する届出用紙は国の厚生年金や厚生年金基金と違って法定様式でないため、国の厚生年金用紙を準用したり、独自の様式を定めたり、基金や規約型の実施事業主によって対応が異なる。


《企業年金における掛金の取り扱い》
(出典:企業年金連合会「実務マニュアル」より)

掛金に関する事務処理』


■掛金に関する事務

 確定給付企業年金の実施事業所の事業主は、給付に関する事業に要する費用に充てるため、数理計算に基づき規約で定めるところにより、 年1回以上、定期的に掛金を拠出することが確定給付企業年金法に定められている。 また、次の基準に従い規約で定めがある場合、加入者が掛金の一部を負担できる。
 1.加入者が負担する掛金の額が、掛金の額の 2 分の1を超えないこと
 2.加入者が掛金を負担することについて、加入者の同意を得ること
 3.掛金を負担している加入者がその掛金を負担しないことを申し出た場合は、掛金を負担しないものとすること
 4.掛金を負担していた加入者であって2、3のいずれかの規定により掛金を負担しないこととなった者が、その掛金を再び負担することができるものでないこと(規約変更により負担する掛金の額が減少する場合を除く)
 事業主は、事業主の拠出する掛金と加入者が負担する掛金を、規約型の場合には資産管理運用機関、基金型の場合には基金に規約で定める日までに納付しなければならない。

■掛金の事務処理の流れ

●掛金の算出
 確定給付企業年金は加入者の現況に基づいて事業所毎の掛金を算出し、次の書類を作成する。
  @ 掛金納付告知書
  A 掛金等増減計算書
  B 掛金事業所別一覧兼納付管理表

●掛金の決定
 確定給付企業年金は「掛金事業所別一覧兼納付管理表」を内訳表として使用し、掛金を決定する。

●掛金の納付依頼
 確定給付企業年金は「掛金納付告知書」に納付期限を記入し、併せて「掛金等増減計算書」を各事業所あてに送付する。 納付期限は、一般的には、当月分を当月末又は翌月末としている。

●掛金の納入
 事業主は確定給付企業年金より送付された「掛金納付告知書」と「掛金等増減計算書」を確認後、掛金を納入する。

●掛金の拠出
 確定給付企業年金は事業主から納入された掛金を資産管理運用機関等に拠出する。

●遅延損害金
 確定給付企業年金は掛金が納入指定期限までに納入されない場合、民法に規定する遅延損害金の規定を規約に定めることにより、掛金を滞納した事業主に対して遅延損害金を請求することができる。

  ※掛金の算定や種別等の詳細については「確定給付企業年金」の「確定給付企業年金の掛金」を参照されたい。

《確定給付企業年金と税金》
(出典:国税庁「タックスアンサー」及び企業年金連合会「実務マニュアル」)



確定給付企業年金の掛金(拠出金)に対する税金


『確定給付企業年金の給付金に対する税金』


■老齢年金

●所得区分
 退職に伴って退職年金として給付されたものは公的年金等に該当し、雑所得として課税される。

●源泉徴収事務
 所得税の源泉徴収は、確定給付企業年金の支払者若しくは支払者たる受託機関にて行う。

●年金給付の源泉徴収
 確定給付企業年金より支払われる年金は、雑所得の公的年金等として源泉徴収を行う必要がある。

●確定申告
 確定給付企業年金より支払われる年金は雑所得として扱い、 受給者が翌年の確定申告時期に申告する必要がある。

■一時金

●退職一時金の所得区分
 退職に伴って退職一時金として給付されたものは、みなし退職手当等に該当し、退職所得として課税される。

●一時金給付の源泉徴収
 確定給付企業年金より支給される一時金(退職に起因して支払われる一時金等)は、退職所得として一時給付金の支給時に源泉徴収される。また、退職所得は所得税の源泉徴収に併せて住民税を特別徴収する。

■その他の給付金

●障害給付金
 非課税

●遺族給付金
 遺族給付金(年金・一時金)には、みなし相続財産として『500万円×法定相続人数』超分に相続税が課税される。

■海外居住の年金受給者の源泉徴収

 居住先の国によって、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と○○○(居住先国)との間の条約」 (租税条約)が、締結されている場合がある。
  その場合、「租税条約に関する届出書」を2通本人に送付し、必要事項を記入の上返送してもらう。それを管轄の税務署長に提出すると、日本国内での源泉徴収税が軽減又は免除される。

■確定給付企業年金に係るその他の税金

●特別法人税の取扱
 加入者への課税は実際に退職して給付を受けるまで繰り延べられる。この課税の繰延べに対する遅延利息という意味あいで設けられているものが特別法人税である。特別法人税は確定給付企業年金の資産管理運用契約の相手方(資産管理運用機関)が預かっている確定給付企業年金資産(加入者拠出掛金がある場合はその部分を除く。)に対して課税される。

   納付時期は年2回で、その年の11月末に半額、翌年の5月未に 残りを確定給付企業年金資産から取崩し、納入する。なお、現在は、令和5年3月31日まで課税が凍結されている。
●資産管理運用契約に係る消費税
 受託機関との資産管理運用契約に基づく手数料は消費税(地方消費税を含む。以下同じ)の対象となる。
  消費税は年間手数料に消費税率等を乗じた額で年金財政決算時に積立金より取崩す。消費税額及び課税対象額は、決算報告時に受託機関から連絡を受ける。

《確定給付企業年金の設立に関する事項》

『確定給付企業年金の設立目的』

●従業員の老後のために退職一時金の年金化を
 従業員の方々のこれからの高齢化社会に対して国の厚生年金や国民年金だけでは老後の生活に不安を感じられていると思うが、この不安を少しでも解消するために、従業員の方々の老後の生活の補完として退職金の年金化を図ることができる。
  年金制度を導入する場合、確定給付企業年金法に基づく確定給付企業年金制度がある。
  確定給付企業年金とは、企業が従業員と給付の内容を約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる年金制度で、「給付建て年金」とも呼ばれ、年金資産を一括して運用し、運用のリスクは企業が負うこととなる。

●年金制度を設立した場合のメリット
 ・ 年金制度を設立することにより、法による種々の優遇措置があるため、効率の良い退職金の運用や管理ができる。
 ・ 事業主が負担する年金制度の掛金は全額損金となる。
 ・ 年金制度の設計方法によっては、運用によるリスクを低く抑えることができるので、掛金の追加負担が発生するリスクについても抑えることができる。
 ・ 退職したときは、年金の積立資産を違う会社や個人年金制度に持込みが可能。

●企業の実情に即した年金制度の検討が必要
 ・ 年金制度を導入する場合、年金給付の水準をどれくらいにするかの検討や、その給付に見合った掛金はどれくらいになるか等、その企業の体質に見合った個々の給付制度の設計を検討することになるが、企業年金制度の設計には専門的な知識が必要となる。
 ・ このような企業年金の設計や業務の委託ができる機関として、法律では信託銀行、信託業務をおこなう金融機関、生命保険会社、農業共同組合連合会や厚生労働大臣が指定した法人(指定法人)とする旨定められている。
  なお、当社は厚生労働大臣が指定した法人(指定法人)である。
 ・ 企業年金制度の設計や業務を受託している信託銀行、生命保険会社、農業共同組合連合会等の受託機関によっては、その受託機関で設定した画一的な企業年金制度の提供や、一定規模以下の企業の業務委託は引き受けないなど一定の制限を設けている受託機関があり、必ずしも事業主の希望どおりにならない場合がある。

 ※退職金の年金化についての詳細については下記によりご参照願います。