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【給付の仕組み】

※(出典:企業年金連合会「実務マニュアル」」より)


《確定給付企業年金の給付の概要》

『確定給付企業年金の給付の概要及び種類と支給要件』

●概 要

 確定給付企業年金の給付は加入時に将来受給できる年金給付額が確定している制度であり、厚生年金基金の加算型に準じた給付がおこなわれる。
 確定給付企業年金の給付は、一定の年齢に到達したことを要件として支給される老齢給付金が基本であるが、規約で定めた場合には老齢給付金の全部又は一部を選択一時金とし支給することもできる。
 また、短期勤続者の場合には、法で定められた加入期間を満たしていれば脱退一時金として支給を受けるか、企業年金連合会や他の年金制度に移換して将来年金として受給することもできる。
 その他、任意の給付金として規約で定めれば、障害給付金や遺族給付金の支給をおこなうこともできる。
 給付要件や給付額は、確定給付企業年金の規約で定められるが、規約を定めるときに法令への違反や特定の者に対して不当に差別的なものであってはならないと規定されている。
 また、適正かつ合理的な方法により算定されたものでなければならないとも規定されている。
 確定給付企業年金から支給される年金額は、支給開始から終身又は5年以上にわたり毎年1 回以上定期的に支給することとされている。

《確定給付企業年金の年金給付・一時金の種類 〜3階建部分〜》


『老齢給付金』

●支給要件
  • 加入者が60歳以上65歳以下の範囲で、規約で定めた年齢に達したときに支給するものであること。
  • 年金給付の受給資格期間が20年を超えない範囲で規約に定めた加入者期間を満たした加入者が、政令で定める年齢(50歳)以上60歳未満の範囲で、規約で定めた年齢に達した日以後に実施事業所に使用されなくなったときに支給するものであること。

  • ●支給の方法
  • 老齢給付金は、年金として支給する。
  • 但し、規約で定めれば、年金で受給できる現価に相当する金額の範囲で老齢年金の一部や全部を一時金として支給することができる。
  • 老齢年金の支給期間は終身又は5年以上にわたる規約で定めた期間とし、少なくても毎年1回以上定期的に支給する。

  • ●支給停止
  • 老齢給付金の受給権者が、規約に定めた障害給付金を支給されたときは、政令で定める基準に従い規約で定めるところにより、老齢給付金の全部又は一部につき、その支給を停止することができる。

  • ●受給権の消滅
  • 老齢給付金の受給権者が死亡したとき
  • 老齢給付金の支給期間が終了したとき
  • 老齢給金の全部を一時金として支給されたとき

  • ●標準的な老齢給付金の計算式
    各企業年金の規約で定めた計算方法に基づいて老齢給付金が計算されるが一般的には次のように計算される。


    『老齢一時金』

    ■給 付

    ●老齢給付の支給期間
    規約の規定があれば老齢給付金を一時金での受給ができる。
    ●老齢給付金の一時金支給基準(選択一時金)
     ・老齢年金としての保証期間が定められている老齢給付金を一時金で支給。
     ・老齢給付金の受給権者が一時金を選択したときに支給。
     ・一時金の選択時期は加入者が年金の指定請求時に一時金として裁定請求をおこなったとき。
     ・年金受給中の方は、年金の受給開始後5年を経過した日以降に限り一時金の請求が き 。
      但し、震災や風水害、火災等により財産に損害を受けたときや、障害や長期間入院した場合等の特別の事情がある場合は、5年を経過する前でも一時金の選択ができる。この場合は、事情があることを明らかにする書類を事業主に提出しなければならない。

    ●標準的な老齢一時の計算式

    『脱退一時金』

    ●支給要件
    ・脱退一時金の支給要件は各企業年金の規約で定められるが、一般的には3年以上、かつ、老齢給付金の受給資格期間以内の加入期間がある加入者が、死亡以外の理由によって加入者の資格を喪失し、かつ、規約で定められた脱退一時金の支給要件を満たすこととなったときに、その者に支給される。
    ・脱退一時金は、一時金としてのみ支給される

    ●脱退一時金の繰下げ請求及び失権
    (1)規約で定められた脱退一時金の支給要件を満たした加入者は、事業主等に脱退一時金の全部又は一部の繰下げを申出ることできる。
    (2)繰下げの申出をした脱退一時金の受給権は、次のいずれかに該当するときは消滅する。
     (ア)脱退一時金の受給権者が死亡したとき
     (イ)脱退一時金の受給権者が老齢給付金の受給権者となったとき
     (ウ)再加入者となる前にその確定給付企業年金の脱退一時金の受給権者となった者についてその確定給付企業年金における前後の加入者期間を合算したとき


    ●標準的な老齢一時の計算式




    『障害給付金』

    ●支給要件
    ・障害給付金は、規約において障害給付金を支給することを定めている場合に、規約で定めるところにより 次に該当する者に支給することができる。
    (ア)初診日において加入者であった者で、障害認定日から60歳以上65歳以下の老齢給付金の支給要件として規約で定められた年齢に到達するまでの間に、その傷病によって規約で定める程度の障害の状態に該当するに至った者
     ※初診日とは、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日
     ※障害認定日とは、初診日から起算して1年6か月を経過した日、又はその期間内にその傷病が治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)
    (イ)ある傷病(基準傷病)の初診日において加入者であった者で、基準傷病以外の傷病により障害の状態にある者が、基準傷病の障害認定日から60歳以上65歳以下の老齢給付金の支給要件の年齢として規約で定められた年齢に到達するまでの間に初めて基準傷病による障害と他の障害とを併合して規約で定める程度の障害の状態に該当するに至った者
    ・規約で定める程度の障害の状態とは、厚生年金保険法に規定する1級、2級及び3級の障害級の範囲内でなければならない。

    ●支給の方法
    ・障害給付金は、規約の定め とこ により年金又は一時金として支給される。

    ●標準的な障害給付金の計算式
    各企業年金の規約で定めた計算方法に基づいて障害給付金が計算されるが一般的には次の点に注意して計算することになっている。
     ・一般的には、障害年金給付金の場合は老齢年金給付金の計算式で計算した年金額で支給し、障害一時金給付の場合は、 退一時金給金の計算式で計算した一時金額を支給する。
     ・障害給付金の現価相当額が老齢給付金の現価相当額を上回らないものあること。


    ●支給停止
    (ア)規約に定める障害に該当しなくなったときは、該当しない間、支給を停止されます。
     (イ)障害給付金の全部又は一部の支給を停止することができる場合
      a.老齢給付金を支給されたとき
      b.脱退一時金を支給されたとき
      c.その傷病について労働基準法の規定による障害補償、労働者災害補償保険法の規定による障害補償給付若しくは障害給付又は船員保険法による障害を支給事由とする給付を受ける権利を取得したとき

    ●受給権の失権
    (ア)障害給付金の受給権者が死亡したとき
    (イ)障害給付金の支給期間が終了したとき
    (ウ)障害給付金の全部を一時金として支給されたとき

    注 記
     規約で定めれば障害給付金の支給ができるが、現時点では障害給付金の給付を行なっている企業年金は少数である。
     また、障害一時金を取り入れている企業年金は平成28年度末まででは0件である。

    『遺族族給付金』

    ●支給要件
    遺族給付金は、規約において遺族給付金を支給することを定めている場合に、加入者又は確定給付企業年金の老齢給付金の支給を受けている者、その他次に該当する者のうち、規約で定める者(以下、給付対象者)が死亡したときに、その遺族に支給される。
    (ア)老齢給付金支給開始要件以外の要件を満たす者(老齢給付金の全部に代え 脱退一時金の支給を受けた者を除く)
    (イ)老齢給付金の支給の繰下げの申出をしている者
    (ウ)脱退一時金の受給権者のうち脱退一時金の全部又は一部の支給の繰下げの申出をしている者
    (エ)障害給付金の受給権者


    ●遺族の範囲
    ・次の者のうち規約で定めるもの。
     (ア)配偶者(事実婚を含む)
     (イ)子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
     (ウ) (ア)及び(イ)のほか、死亡の当時死亡した者によって生計を維持されていたその他の親族
    ・遺族給付金を受けることができる遺族の順位は、規約で定める。

    ●支給の方法
    遺族給付金は、規約で定めるところにより、年金又は一時金として支給される。


    ●標準的な遺族給付金の計算式
    各企業年金の規約で定めた計算方法に基づいて遺族給付金が計算されるが、年金を決定する場合、遺族給付金の現価相当額が老齢給付金の現価相当額を上回らない範囲で決定することになっている 。

    1.遺族給付金として支給する場合

    2.遺族一時金として支給する場合

    ●年金として支給する遺族給付金の支給期間
    老齢給付金又は障害給付金の給付を受けている者が死亡したときにその遺族に年金として支給する遺族給付金の支給期間は、その老齢給付金又は障害給付金の支給期間として規約で一定期間を定めていた場合は、5年未満とすることができる。
    ただし、老齢給付金又は障害給付金の支給期間のうち給付を受けていない期間よりも短い期間とすることはできない。

    ●遺族給付金の失権
    ・遺族給付金の受給権は、次のいずれかに該当することになったときに消滅する。
     (ア)遺族給付金の受給権者が死亡したとき
     (イ)遺族給付金の支給期間が終了したとき
     (ウ)遺族給付金の全部が一時金として支給されたとき
    ・遺族給付金の受給権者が死亡したときは、その受給権者の次の順位の遺族に遺族給付金を支給することができる。
    ・遺族給付金の受給権は、受給権者が次のいずれかに該当することになったときに消滅するものとすることができる。
     (ア)婚姻(事実婚を含む)したとき
     (イ)直系血族及び直系姻族以外の者の養子となったとき
     (ウ)離縁により、給付対象者との親族関係が終了したとき

    ●未支給の年金給付
    @受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者に係る遺族のうち規約で定めるものは、自己の名で、その未支給給付の支給を請求することができる。
    A死亡した受給権者が死亡前にその請求をしていなかったときは、この遺族は、自己の名で、その給付を請求することができる。
    B未支給給付を受けることができる遺族の順位は、規約に定めるところによる。

    確定給付企業年金と税金

       (出典:国税庁「タックスアンサー」及び企業年金連合会「実務マニュアル」)

    確定給付企業年金の掛金(拠出金)に対する税金


    確定給付企業年金の給付金に対する税金

    ■老齢年金

    ●所得区分
    退職に伴って退職年金として給付されたものは公的年金等に該当し、雑所得として課税される。

    ●源泉徴収事務
    所得税の源泉徴収は、確定給付企業年金の支払者若しくは支払者たる受託機関にて行う。

    ●年金給付の源泉徴収
    確定給付企業年金より支払われる年金は、雑所得の公的年金等として源泉徴収を行う必要がある。源泉徴収額は以下の計算方法で算出する。


    ●確定申告
    確定給付企業年金より支払われる年金は雑所得として扱い、 受給者が翌年の確定申告時期に申告する必要があるが、公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下で ある場合には、申告を要しないこととされている。
    ただし、確定給付企業年金は支払いの都度、一律7.6575% 源泉徴収するため、税額の過不足を精算するには、確定申告が必要となる。

    ●確定申告による最終的な精算
    確定申告による最終的な精算年金にかかる所得税の納付は、源泉徴収により行われるが、最終的に納める税額は年税額で計算されます。このため、最終的な所得税の精算は確定申告により行われる。
     一般的に、2以上の年金支払者に扶養親族等申告書を提出している人や年金収入の他に給与収入などがある人、又は公的年金等の雑所得の金額が各種所得控除の合計額を超える人などは確定申告をしなければならない。また、源泉徴収により納めた税額の還付が受けられる人などは、確定申告をすることができる。
    (1)確定申告に必要なもの
      確定申告の際には、日本年金機構や企業年金等から交付された源泉徴収票が必要となる。年金以外の給与収入などがある人は、それについての源泉徴収票も必要になる。
     また、生命保険料控除や医療費控除を受けようとする場合は、それぞれについての証明書や領収書などを提出する必要がある。
    (2)公的年金等にかかる雑所得の金額
      確定申告の際の「公的年金等にかかる雑所得」の金額は、その年の受け取る年金の額から公的年金等控除額を差し引いた残額となる。すなわち「公的年金等にかかる雑所得」=「年金額」−「公的年金等控除額」の計算式により求める。公的年金等控除額は、年齢と年金額により異なる。

    ■一時金

    ●退職一時金の所得区分 
    退職に伴って退職一時金として給付されたものは、みなし退職手当等に該当し、退職所得として課税される。

    ●一時金給付の源泉徴収
    確定給付企業年金より支給される一時金(退職に起因して支払われる一時金等)は、退職所得として一時給付金の支給時に源泉徴収される。また、退職所得は所得税の源泉徴収に併せて住民税を特別徴収する。

     a.退職所得控除額の計算
         退職所得控除額は、勤続年数に基づき計算する。
         「退職所得控除額」
            勤続年数   退職所得控除額
            0〜20年  1年につき 40万円
            21年以上  1年につき 70万円
          上の表に基づき計算された控除額が80万円に満たないときは80万円を控除額とする。
     b.退職所得の源泉徴収税額
       確定給付企業年金より支給される一時金(退職に起因して支払われる一時金等)は、所得税法第31条により、退職手当とみなされる(加入者拠出金がある場合は支払額から加入者拠出金相当分を控除した額が課税対象となる)。
       源泉徴収税額を算出するにあたっては、まず、「退職所得の受給に関する申告書、退職所得申告書」が提出されているかどうか確認する。

      (「退職所得の受給に関する申告書、退職所得申告書」が提出されていない場合)
         ・一時金額×20.42%=源泉所得税額
          ※特別徴収税(住民税)は、退職所得の受給に関する申告書が提出されたものとして計算する。
          ※税額の精算は一時金の受給者本人が直接税務署に確定申告することにより行う。

      (「退職所得の受給に関する申告書、退職所得申告書」が提出されている場合)
         ◎源泉所得税を求める計算式は次のとおりである。
          ・(一時金額−退職所得控除額)×1/2×所得税率=源泉所得税額
         ◎特別徴収税(住民税)を求める計算式は次のとおりである。
          ・(一時金額−退職所得控除額)×1/2×{市町村民税(特別区民税6%)+都道府県民税4%}=特別徴収税(住民税)
     c.退職時に事業主等より支払済の退職金がある場合、退職時に事業主等より退職金が支払われ、その後確定給付企業年金からも一時金が支払われることとなった場合等、退職時の退職金の支払者が 複数になる場合は、それぞれの支払者がその支払時に税額を計算し、源泉徴収を行うこととなる。
        なお、退職時に確定給付企業年金から一時金の支払が行われる前に、事業主等から退職金が支払われている場合は、確定給付企業年金の支払者に対して事業主等の作成した「退職所得の源泉徴収票」を提出する必要がある。(写しでも可。)


    ■その他の給付金

    ●障害給付金
     非課税

    ●遺族給付金
     遺族給付金(年金・一時金)には、みなし相続財産として『500万円×法定相続人数』超分に課税される。

    ■海外居住の年金受給者の源泉徴収


     居住先の国によって、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と○○○(居住先国)との間の条約」 (租税条約)が、締結されている場合がある。
      その場合、「租税条約に関する届出書」を2通本人に送付し、必要事項を記入の上返送してもらう。それを管轄の税務署長に提出すると、日本国内での源泉徴収税が軽減又は免除される。
      なお、租税条約が締結されていても年金条項がない等の理由により所得税の免除が受けられない場合や、租税条約のない場合は所得税法に基づき下記の式にて源泉徴収税額を算出し、源泉徴収を 行う。
      ◎海外居住者で租税条約のない場合の源泉徴収
       ・{各期支払額−(6万円×支払月数)}×20% ×102.1%=源泉徴収税額
        ただし、6万円については、65歳以上は10万円、年齢の判定はその年の12月31日現在。